奪われる25

ゆうくん
2005年01月22日
5,247
安西はニヤリと笑うと不安げにそわそわしている美奈子に声をかけた。一時の興奮が去り、また以前のいやらしい“ですます調”が戻ってきている。
「つ、続きって‥‥」
「忘れちゃ困りますよ。オナニーをしてくれと要求したら、奥さんが嫌だと言うんで、私が代わりに愛撫してあげるはずだったじゃないですか」
「あ、愛‥‥そんなのダメです。‥‥お願い、しないで」
美奈子は訴えるような目で懇願する。が、そんなことで心を動かされる安西ではなかった。
「嫌とは言わせませんよ、奥さん。奥さんは私を叩いて二度目の怪我を負わせたんだ。それなりの代償を払ってもらいます。是が非でも、興奮して濡れた奥さんの“そこ”を見せてもらいましょう」
「な、殴ったことは謝ります。だから、どうかお願い‥‥。私には夫がいるんです」
安西はせせら笑いながら首を振る。
「そんなの言い訳になりませんよ。だいいち奥さんは念書で約束したじゃないですか。私に全面的に協力するって」
「‥‥でも」
「――そんなに嫌なんですか。じゃあこちらも少し妥協しますよ」
安西は軽く舌なめずりをして言った。
「時間を限定しましょう。そうだな‥‥十五分でどうです?十五分間だけ私に奥さんの身体を愛撫させてください」
「じゅ、十五分?」
「そう。時間になったらやめます。それで奥さんの身体が“反応”していたら、私はカメラを向けるし、全然変化がなかったら素直に諦める。それでいいでしょう」
美奈子の胸は葛藤が渦巻いた。こんな野卑で下劣な男に身体を愛撫されるなど、想像しただけで全身の肌が毛羽立つほどの嫌悪感を覚える。しかし、こういう約束でも取りつけない限り、下手をすると何時間でも弄ばれそうだ。
「‥‥本当に十五分でいいんですね?」
「もちろん。約束は守りますよ」
美奈子は決意した。十五分間だけ殻に閉じこもって人形になればいいのだ。
そうすればきっと十五分なんてあっという間に済む。NHKの朝ドラ一回分ではないか。
「わ、わかりました。十五分間だけ我慢します」
血を吐くような美奈子の言葉が漏れた。安西は満足そうに前歯を見せた。
安西はサイドテーブルの上の目覚まし時計に手を伸ばした。文字盤が美奈子と自分に見えるように角度を調節する。
「時計が見えますか。今十時半ですね。ですから四十五分まで私の自由にさせてもらいますよ」
「‥‥はい」
安西は、強張った美奈子の表情を嗜虐的に楽しみながら、美奈子の両ももの上から降りた。膝頭を掴んで左右の方向へ力を込める。
「‥‥うう‥‥」
恥辱の吐息が美奈子の細く開いた唇から漏れた。――これから両足を思い切り押し開かれ、股間を剥き出しにされ、指で、舌で、女の部分を激しく愛撫されるのだろう。制限時間付きの愛撫なのだから、初めから獣じみた怒濤の勢いで責めてくるに違いない。何が何でも美奈子の性感を呼び覚まそうと躍起になってくるだろう。
しかし――美奈子の予想は外れた。安西は慌てなかった。むしろのんきと思えるほど落ち着いて静かであった。
まず美奈子の両足を開き、己の頭部がやっと収まる程度の間隙をつくった。
むろん、この程度の開脚では、股間の土手の部分は開いても、内側の二枚の花弁は閉じたままで、内部の粘膜を明るい照明の元に晒すということはない。
紡錘形に開いた肉厚の土手の内部で、ぴっちり口を閉じた二枚貝のような柔肉の合わせ目が、安西の眼下で直線的に伸びているのが見える。美奈子の内心の緊張を反映しているのか、生硬な印象が強く、乾いていた。
安西は内ももの間に顔を落とし込んだ。先ほど性器の匂いを嗅いだときと同じ位置まで接近する。もう女の羞恥の源泉は目の前であった。
両手を脚の外側から回して、大腿部を抱え込み、二度と閉じることができないように押さえた。
全ての準備は整った。
安西は舌を思い切り突き出し、肉の扉の合わせ目の下端に密着させた。
「‥‥うう‥‥いや‥‥」
美奈子は女の最も大切な部分に、安西の舌が触れてきたことを感じ取り、生理的嫌悪のうめきを漏らした。
安西は尖った舌の先端部ではなく、中程の一番広い部分を押しつけて、しばらく感触を楽しむように静止した後、ゆっくり上方へ舐め上げ始めた。“粘着”という単語がふさわしい、じわじわとのろい動きだった。
口から突き出された赤い柔肉のざらざらした表面が、乾いた小陰唇の上を摩擦しながら動いてゆく。しかも安西は舌を密着させる直前に、唇で舌の表面の唾液をできるだけこすり落としていた。乾いた粘膜がいっそう摩擦感を強くする。
「‥‥うっ‥‥くぅ‥‥」
股間の中心部から湧き起こり、放射状に拡散していく奇妙な感覚に、美奈子は奥歯を喰いしばって耐える。性的な快感ではない。一種の痛痒感にも似た感覚だった。大きな芋虫が身をのたくらせながら肌の上を這い回る擽(くすぐ)ったさと嫌悪感にそっくりだった。
花びらの合わせ目の上端まで舐め上げた後、安西の舌はようやく美奈子の秘めやかな亀裂から離れた。ほっとする間もなく、また舌が二枚貝の下部に貼り付けられる。軟体動物のような感触のものが、再度合わせ目をじりじりと登ってゆく。
安西の舌は無理に美奈子の扉をこじ開けようという動きは見せなかった。また、合わせ目の上端の突き出た部分に潜んでいる、感覚の最も敏感な肉の真珠に、悪戯をしかけるということもなかった。ただひたすら、ぴたりと閉じた門戸の上を這い上がるだけだ。
「‥‥ううっ、‥‥う‥‥」
むず痒さと生理的嫌悪で、美奈子はうめき声を抑えることができない。
安西は何度か舌で股間の中心部を舐めた後、美奈子の女の器官に現れたかすかな変化に目をとめた。
先ほどまで生硬に口を閉ざしていたはずの花弁に、ごくわずかではあったが“ほつれ”が生じているのである。
亀裂の合わせ目の上端から下方へ、わずか二、三センチの長さではあったが、二枚の花びらの間に細い隙間が生まれているのだ。
むろん隙間といっても一ミリ程度のささやかなものに過ぎない。しかし、安西の舌先が合わせ目をこじ開けようという動作を一切とらなかったにもかかわらず、このような“ほつれ”が生じているというのは重要だった。
美奈子の女の扉が自ら動き始めた証拠だからだ。
安西の細い目が光った。
さらに安西の舌がのろのろと股間の二枚貝の上を何度か舐めた。
再び安西は女の扉を注視する。“ほつれ”は、さらに拡大していた。今では既に亀裂の全体に渡って間隙が存在している。もう少し幅が広がれば、内部の粘膜まで覗けるであろう。
美奈子の肉体の崩壊の序曲だった。美奈子は文字通り安西の前にその神秘の扉を開き始めたのだった。むろん、美奈子本人はその事実を知らない。
安西はちらりと美奈子の表情をうかがった。
美奈子は顔を横に向け、目覚まし時計の文字盤を一心に見つめていた。
時計の針は十時三十三分を指している。