奪われる24
ゆうくん
2005年01月22日
3,723
予期せぬ出来事が起こったのは、安西の淫猥な顔面から伸びた舌先が、美奈子の女の部分に触れようとした、まさにその瞬間だった。
安西自身、油断があったとしか言いようがない。美奈子の抵抗を一つ一つ奪っていき、いよいよ女の臓器をじかに舌で味わおうというところまで追いつめたのだ。抜かりなく手順を踏んできたはずだったが、順風満帆ゆえの油断に足をすくわれることとなった。
先ほど美奈子の両足を押し広げ、その股間を思う存分観察したときは、美奈子の抵抗は安西によって完全に封じ込められていた。しかしそれはある意味偶然の産物だったのだ。
女の抵抗のほとんどは、その両腕の動作によって生じる。平生非力な女でも、死にものぐるいで腕を振り回せば、なかなか馬鹿にできないやっかいな抵抗を生み出す。
あのときの美奈子は、その肝心の両腕を自身の太ももと上半身の間隙に挟まれていた。いわば最大の武器を自ら封印してしまっていた形になっていたのだ。
が、今度は違う。両手は何らの束縛も受けず、身体の両脇に置かれたままだった。
迂闊にも安西はそれを失念していた。あるいは、いよいよ美奈子の“そこ”を味わえるという性的な興奮が、長年の調査員勤務で培ってきた彼の冷静な判断力を奪っていたのかもしれない。
安西が己の手抜かりを自覚したのは、長く差し出した舌が魅惑の亀裂に届く寸前、美奈子が嫌悪の絶叫を挙げながら、力まかせに振り回した片腕の手の甲が、右側の頬を直撃したときだった。
バシーンッ!
打撃音が寝室に響き渡る。同時に安西の顔が左側にねじ向けられる。
殴られた安西も殴った美奈子もはっとなった。
安西が反射的に強い打撃の襲った右頬に手のひらを当てる。ぬるっとした感触があった。掌を離し、視線を落とす。血が付着している。さらにその上へ、ぽたり、ぽたりと鮮血の滴が落下し、世界地図のような模様を描いてゆく。
「‥‥ウッ?‥‥」
鼻血だった。美奈子の手の甲が、頬を打った後、鼻筋を直撃して、左側に抜けたのだ。
予期せぬ事態に、次第に面積を広げる血痕を、呆然と眺めた。
予期せぬ事態に呆然となったのは安西だけではない。美奈子も同様だった。
「‥‥ああっ‥‥」
美奈子の口から恐怖のうめきが漏れる。容顔から音を立てて血の気が引き、表情が強張ってゆく。
美奈子はこれまで暴力とは無縁の世界に住んでいた。年端もいかない幼児時代はともかく、物心ついてからは両親にも手を挙げられたことはなかった。むろん、夫の雄二も同様である。また、こちらから暴力を振るったこともない。
今回も男を殴ろうと思って殴ったわけではなかった。
見ず知らずの下卑た中年男に、自分の大切な部分を舌で弄ばれるのは、死にも勝る恥辱であり苦痛である。なんとか阻止したい。そんな気持ちが両腕を力一杯振り回すという行為になって表出したのだ。それが安西の顔面を捉えたのは偶然に過ぎない。
――他人を殴った、しかも出血するほど激しく。
その思いは、美奈子をかえって狼狽させ、恐怖へと駆り立てた。この隙に逃げ出そうなどという考えはとても浮かばない。
しかも美奈子をいっそう戦慄させたのは安西の表情の変化であった。
安西は、しばし思考停止したように呆然と己の手のひらに滴る鮮血を眺めていたが、やがてドス黒い怒りがその顔面を覆った。両目が釣り上がり、額からこめかみにかけて静脈が山脈のように盛り上がる。拳を握りしめ、肘を後方へ引いた。
「や、やあっ!」
殴られると直感した美奈子から恐怖の絶叫が上がる。とっさに上半身を丸め、両手で頭部を覆う。下半身も丸めたかったのだが、安西の身体が両足の間に割り込んでいるのでできなかった。
安西は腕を振り上げたものの、必死で自制した。暴力への衝動が解放を求め、彼の内部で理性とせめぎあった。しばし葛藤した。やがて、眼下で丸くなって震えている美奈子を眺め下ろすうちに、理性の方が勝利を収めた。
安西は興奮のあまり激しく呼吸しながら、振り上げた腕から力を抜いた。
「‥‥やめて‥‥殴らないで‥‥」
美奈子はうわごとのようにつぶやいている。
「奥さん、奥さんが俺に怪我をさせたのはこれで二回目だ」
安西はサイドテーブルの上の箱からからティッシュを引き出し、血痕を拭いながら、鉄鋼のように強張った声で話しかける。幸い出血はすぐ止まった。
「でも、これが最後だ。三度目は許さない。わかったか、奥さん」
安西の声が聞こえているのか聞こえていないのか、美奈子は胎児の姿勢で震えるばかりであった。
安西は自分の肘と足首から包帯をくるくるとほどいてゆく。美奈子の車との接触で擦りむいた傷を治療した際に巻いてもらった二本の包帯だ。
安西は身体を丸めたまま竦んでいる美奈子を尻目にベッドから降りると、包帯の一端をベッドの頭の側の脚に結びつける。それから美奈子の右腕を取ると、ベッドの脚の方向にまっすぐピンと伸びるように引っ張り、包帯のもう一端をぎゅっと縛り付けて固定してしまう。
「ああ!いや!な、何を‥‥やめてっ!」
さすがに狼狽した美奈子は悲鳴を上げる。右腕は既に万歳をする形で固定されてしまっている。自由を奪われる――美奈子の裸体を今までとは別種の戦慄が駆け抜ける。
「何って、ごらんの通り二度と奥さんが暴力を振るえないように縛ってるのさ」
安西のキツネ目が不気味に光った。
美奈子は弱々しく訴えた。
「‥‥お、お願いです。‥‥そんなことしないで」
「――また俺を殴ろうというのか?」
抑えた口調だったが、有無を言わせない迫力に満ちていた。
「そ、そんなつもりは‥‥」
「とにかく腕だけでも固定させてもらうよ。そうでもしなけりゃ安心できないんでね」
安西は美奈子の左腕を取り、手首に包帯を縛り付けると、今度は反対側のベッドの脚に結びつけるべく、ぐっと引いた。美奈子の細い腕がピンと伸びる。
「‥‥あ、いや‥‥ど、どうしても縛らなきゃいけないんですか‥‥」
「これ以上奥さんに怪我をさせられるのは御免だからな。それに、今度俺を殴ったら、さすがに俺も自制が利かなくなりそうだから」
今までの慇懃な“ですます調”のとはまるで違う口調に、美奈子は抵抗への意志を根こそぎ刈り取られてしまう。
そうこうしているうちに安西は包帯の端をベッドの脚に縛り終えた。
美奈子は万歳の姿勢よりはやや両手を開いた形、つまりローマ字のYのような形でベッドに縛り付けられてしまった。
伸縮性のある包帯で縛り付けているので、強く引っ張れば多少は腕が動かせるものの、せいぜい十センチか二十センチ程度でしかない。これでは両手を合わせることができないので、自分で縛めを解くことは不可能だった。
下半身は固定されていないので一応自由だが、上半身が思うように動かせないのでは、その動作に制約が生まれてしまうのは必定だ。
事実上、美奈子は完全に行動の自由を奪われてしまったことになる。
美奈子は怯えた表情できょろきょろと周囲を見回す。安西が離れたので、両足は再びピタリと閉じられていた。女の本能が危険を察知しているに違いない。
安西は再びベッドに乗り、美奈子の両ももの合わせ目の上に腰を下ろし、美奈子が少しでも腕を自由にすべく、ベッドの上方へずり上がろうとするのを防いだ。
じっと美奈子の裸身を見下ろす。両腕が肩よりも高い位置に引っ張られているので、自然と胸板を突き出すような姿勢になっており、それが乳房の大きさと高さを強調していた。
美奈子の抵抗を許し、鼻血が出るほど顔を張られたのは誤算だったが、その代償として美奈子の身体の自由を奪うことに成功したのだ。しかもほとんど抵抗らしい抵抗に遭うこともなく。
それは美奈子を犯す環境が整ったことを意味する。
殴られて出血した当初は頭にカッと血が上ったが、かえってこのハプニングは安西に味方したと言える。
今では安西はむしろ美奈子に感謝したいくらいであった。
自分があと為すべきは、美奈子の肉体を内側から燃え上がらせることだ。男の欲望を受けとめ、自らも楽しむよう、美奈子の官能を暴走させてやるのだ。
「さ、奥さん、続きを始めましょうか」
安西自身、油断があったとしか言いようがない。美奈子の抵抗を一つ一つ奪っていき、いよいよ女の臓器をじかに舌で味わおうというところまで追いつめたのだ。抜かりなく手順を踏んできたはずだったが、順風満帆ゆえの油断に足をすくわれることとなった。
先ほど美奈子の両足を押し広げ、その股間を思う存分観察したときは、美奈子の抵抗は安西によって完全に封じ込められていた。しかしそれはある意味偶然の産物だったのだ。
女の抵抗のほとんどは、その両腕の動作によって生じる。平生非力な女でも、死にものぐるいで腕を振り回せば、なかなか馬鹿にできないやっかいな抵抗を生み出す。
あのときの美奈子は、その肝心の両腕を自身の太ももと上半身の間隙に挟まれていた。いわば最大の武器を自ら封印してしまっていた形になっていたのだ。
が、今度は違う。両手は何らの束縛も受けず、身体の両脇に置かれたままだった。
迂闊にも安西はそれを失念していた。あるいは、いよいよ美奈子の“そこ”を味わえるという性的な興奮が、長年の調査員勤務で培ってきた彼の冷静な判断力を奪っていたのかもしれない。
安西が己の手抜かりを自覚したのは、長く差し出した舌が魅惑の亀裂に届く寸前、美奈子が嫌悪の絶叫を挙げながら、力まかせに振り回した片腕の手の甲が、右側の頬を直撃したときだった。
バシーンッ!
打撃音が寝室に響き渡る。同時に安西の顔が左側にねじ向けられる。
殴られた安西も殴った美奈子もはっとなった。
安西が反射的に強い打撃の襲った右頬に手のひらを当てる。ぬるっとした感触があった。掌を離し、視線を落とす。血が付着している。さらにその上へ、ぽたり、ぽたりと鮮血の滴が落下し、世界地図のような模様を描いてゆく。
「‥‥ウッ?‥‥」
鼻血だった。美奈子の手の甲が、頬を打った後、鼻筋を直撃して、左側に抜けたのだ。
予期せぬ事態に、次第に面積を広げる血痕を、呆然と眺めた。
予期せぬ事態に呆然となったのは安西だけではない。美奈子も同様だった。
「‥‥ああっ‥‥」
美奈子の口から恐怖のうめきが漏れる。容顔から音を立てて血の気が引き、表情が強張ってゆく。
美奈子はこれまで暴力とは無縁の世界に住んでいた。年端もいかない幼児時代はともかく、物心ついてからは両親にも手を挙げられたことはなかった。むろん、夫の雄二も同様である。また、こちらから暴力を振るったこともない。
今回も男を殴ろうと思って殴ったわけではなかった。
見ず知らずの下卑た中年男に、自分の大切な部分を舌で弄ばれるのは、死にも勝る恥辱であり苦痛である。なんとか阻止したい。そんな気持ちが両腕を力一杯振り回すという行為になって表出したのだ。それが安西の顔面を捉えたのは偶然に過ぎない。
――他人を殴った、しかも出血するほど激しく。
その思いは、美奈子をかえって狼狽させ、恐怖へと駆り立てた。この隙に逃げ出そうなどという考えはとても浮かばない。
しかも美奈子をいっそう戦慄させたのは安西の表情の変化であった。
安西は、しばし思考停止したように呆然と己の手のひらに滴る鮮血を眺めていたが、やがてドス黒い怒りがその顔面を覆った。両目が釣り上がり、額からこめかみにかけて静脈が山脈のように盛り上がる。拳を握りしめ、肘を後方へ引いた。
「や、やあっ!」
殴られると直感した美奈子から恐怖の絶叫が上がる。とっさに上半身を丸め、両手で頭部を覆う。下半身も丸めたかったのだが、安西の身体が両足の間に割り込んでいるのでできなかった。
安西は腕を振り上げたものの、必死で自制した。暴力への衝動が解放を求め、彼の内部で理性とせめぎあった。しばし葛藤した。やがて、眼下で丸くなって震えている美奈子を眺め下ろすうちに、理性の方が勝利を収めた。
安西は興奮のあまり激しく呼吸しながら、振り上げた腕から力を抜いた。
「‥‥やめて‥‥殴らないで‥‥」
美奈子はうわごとのようにつぶやいている。
「奥さん、奥さんが俺に怪我をさせたのはこれで二回目だ」
安西はサイドテーブルの上の箱からからティッシュを引き出し、血痕を拭いながら、鉄鋼のように強張った声で話しかける。幸い出血はすぐ止まった。
「でも、これが最後だ。三度目は許さない。わかったか、奥さん」
安西の声が聞こえているのか聞こえていないのか、美奈子は胎児の姿勢で震えるばかりであった。
安西は自分の肘と足首から包帯をくるくるとほどいてゆく。美奈子の車との接触で擦りむいた傷を治療した際に巻いてもらった二本の包帯だ。
安西は身体を丸めたまま竦んでいる美奈子を尻目にベッドから降りると、包帯の一端をベッドの頭の側の脚に結びつける。それから美奈子の右腕を取ると、ベッドの脚の方向にまっすぐピンと伸びるように引っ張り、包帯のもう一端をぎゅっと縛り付けて固定してしまう。
「ああ!いや!な、何を‥‥やめてっ!」
さすがに狼狽した美奈子は悲鳴を上げる。右腕は既に万歳をする形で固定されてしまっている。自由を奪われる――美奈子の裸体を今までとは別種の戦慄が駆け抜ける。
「何って、ごらんの通り二度と奥さんが暴力を振るえないように縛ってるのさ」
安西のキツネ目が不気味に光った。
美奈子は弱々しく訴えた。
「‥‥お、お願いです。‥‥そんなことしないで」
「――また俺を殴ろうというのか?」
抑えた口調だったが、有無を言わせない迫力に満ちていた。
「そ、そんなつもりは‥‥」
「とにかく腕だけでも固定させてもらうよ。そうでもしなけりゃ安心できないんでね」
安西は美奈子の左腕を取り、手首に包帯を縛り付けると、今度は反対側のベッドの脚に結びつけるべく、ぐっと引いた。美奈子の細い腕がピンと伸びる。
「‥‥あ、いや‥‥ど、どうしても縛らなきゃいけないんですか‥‥」
「これ以上奥さんに怪我をさせられるのは御免だからな。それに、今度俺を殴ったら、さすがに俺も自制が利かなくなりそうだから」
今までの慇懃な“ですます調”のとはまるで違う口調に、美奈子は抵抗への意志を根こそぎ刈り取られてしまう。
そうこうしているうちに安西は包帯の端をベッドの脚に縛り終えた。
美奈子は万歳の姿勢よりはやや両手を開いた形、つまりローマ字のYのような形でベッドに縛り付けられてしまった。
伸縮性のある包帯で縛り付けているので、強く引っ張れば多少は腕が動かせるものの、せいぜい十センチか二十センチ程度でしかない。これでは両手を合わせることができないので、自分で縛めを解くことは不可能だった。
下半身は固定されていないので一応自由だが、上半身が思うように動かせないのでは、その動作に制約が生まれてしまうのは必定だ。
事実上、美奈子は完全に行動の自由を奪われてしまったことになる。
美奈子は怯えた表情できょろきょろと周囲を見回す。安西が離れたので、両足は再びピタリと閉じられていた。女の本能が危険を察知しているに違いない。
安西は再びベッドに乗り、美奈子の両ももの合わせ目の上に腰を下ろし、美奈子が少しでも腕を自由にすべく、ベッドの上方へずり上がろうとするのを防いだ。
じっと美奈子の裸身を見下ろす。両腕が肩よりも高い位置に引っ張られているので、自然と胸板を突き出すような姿勢になっており、それが乳房の大きさと高さを強調していた。
美奈子の抵抗を許し、鼻血が出るほど顔を張られたのは誤算だったが、その代償として美奈子の身体の自由を奪うことに成功したのだ。しかもほとんど抵抗らしい抵抗に遭うこともなく。
それは美奈子を犯す環境が整ったことを意味する。
殴られて出血した当初は頭にカッと血が上ったが、かえってこのハプニングは安西に味方したと言える。
今では安西はむしろ美奈子に感謝したいくらいであった。
自分があと為すべきは、美奈子の肉体を内側から燃え上がらせることだ。男の欲望を受けとめ、自らも楽しむよう、美奈子の官能を暴走させてやるのだ。
「さ、奥さん、続きを始めましょうか」