奪われる23

ゆうくん
2005年01月12日
5,584
夫の雄二との夜の営みでさえ、事前にシャワーを浴びなければ許さないほど初心な面のある美奈子である。縁もゆかりもない中年男に、秘部の匂いを嗅がれるのは耐え難い拷問だった。
しかも、ゆうべの入浴以来二十四時間近くシャワーさえ浴びず、さらに、一日中肉体労働に従事した後なのだ。股間の粘膜の部分がどんな臭気を放っているか、女の美奈子にはよくわかっていた。
必死に身体をくねらせ、束縛から逃れようとするが、安西はがっちりと押さえ込んでベッドの上に釘付けにしてしまう。
安西はわざと音を立てて息を吸い込む。
「ああっ!お願い、やめてっ!」
「ククク、ちょっと意外でしたね。奥さんみたいな美人は“ここ”も香水みたいないい香りだと思ってたんですがね、けっこう動物的な匂いですな」
「いやーっ!い、言わないでェ!」
「ははは、とびきりの美人さんもやっぱり“おんな”だったんですね」
美奈子は恥ずかしさのあまり、真っ赤になって強く首を振る。
安西はようやく股間から顔を上げた。両手は相変わらず美奈子の身体を押さえつけたままだ。
「さて、奥さん、撮影の再開ですよ」
美奈子は鳴き声を上げた。
「ま、まだ撮るん‥‥もう充分でしょう。終わりにしてください。もうこれ以上は‥‥」
「駄目ですよ。奥さんがオールヌードになってからまだ一枚も撮ってないんですからね。――とりあえず奥さんの一番大切なところを撮影しますから、この姿勢のまま
でいてください」
「‥‥一番大切なところ‥‥い、いやっ!そんなの駄目です!絶対いやっ!」
「ははは、もう諦めなさいよ。私はもう、奥さんの女の秘密をじっくり見てる
んです。二回もね。それに奥さんの“匂い”まで知ってる‥‥」
「‥‥ううう」
「今更隠したって無駄なんですよ。目をつむっても鮮明に浮かんでくるくらいですからね」
安西は唇の端で笑う。
「ああ、言わないで」
「さ、身体の力を抜いて。手を離しますけど足を閉じないように。わかりましたね?」
哀しげにうめいた美奈子の全身から、徐々に力が抜けていくのが、安西にははっきり感じることができた。長らく膝裏を押さえ続けた両手を離してみる。
美奈子の両足はやや浮き上がったものの、閉じられることはなかった。
美奈子の抵抗がないことを確認した安西は、束縛から解放された美奈子の両手を取った。V字型に開いている両ももを外側から抱え込ませる。美奈子は赤ん坊がおしめを替えるときの姿勢を、自分自身でとることを強制された。

「ああ、いやよ!こんな‥‥ポーズ。は、恥ずかしい‥‥」
羞恥の悲鳴を発するものの、美奈子は姿勢を崩さなかった。局部をじっくり観察されてしまったことと、匂いまで嗅がれてしまったことが、胸の中の諦念をより大きく成長させてしまっていたのだ。
安西はカメラを手に取るとレンズを美奈子の股間に向ける。
「さあ、また撮りますよ。‥‥なんだか身体が硬いようですね。全身の力を抜いてリラックスしてください」
全裸の撮影が始まった。
ベッドの上で股間を大きく開いた美奈子の裸身に、フラッシュの光線が立て続けに浴びせられる。安西がシャッターを切るたびに生々しい肉体が一瞬白く輝き、微妙な陰影が蒸発する。
――ああ‥‥は、恥ずかしい。早く終わって‥‥お願い。
美奈子の両目はまた強く閉じられた。それは、暗黒の世界に閉じこもったまま、恥辱の時間をやり過ごそうとする美奈子の意志を表していた。
が、現実は非情だった。フラッシュが強烈に輝くと、瞼を透かした光線が赤く網膜を刺激するのだ。美奈子はその都度、股間を見ず知らずの男の目に晒している事実を痛感させられてしまう。自分の殻に閉じこもることさえゆるされぬ美奈子は、恥辱に胸を焼く思いだった。
安西は内心の高ぶりでいくらか息を弾ませながら、ファインダーを覗き、シャッターを切っていく。
フィルムの残りがわずかになってきたので、安西はこっそりハードケースの中の予備カメラとすり替えた。同型カメラなので美奈子に疑われる心配はない。
依然としてフィルムの入っていない空のカメラを使用していると思うはずだ。
行きがけの駄賃に、安西は美奈子のショーツをハードケースの中に落とし込む。安西は下着フェチではないが、この純白のショーツを“戦利品”として、記念に持ち帰ろうと思ったのだ。
ベッドに横たわり、両目を固くつむった美奈子は、そんな安西の行為に全く気づく気配がない。
一通り撮影を終えた安西は、再びベッドに上り、美奈子の股間の前に陣取る。
美奈子は気配で撮影が終わったことを知り、薄く瞼を開いた。
「‥‥もう充分でしょう。終わりにしてください」
安西は鼻でせせら笑った。
「まだですよ。まだ終わりにできません。まだ見せてもらわなきゃならんものがあるんで」
「‥‥そんな。わ、わたしもう全部見せたじゃないですか」
「いや、まだ奥さんに見せてもらいたいところが残っていますよ」
安西はニンマリ笑うと、美奈子の太ももの裏に手のひらを当て、股間の中心部へ視線を落とした。
「――奥さんの大切な部分はたいへん美しい。さっきも言いましたがまるで花が咲いたようだ。感心しましたよ」
「‥‥‥‥」
「ところで、私は風景写真家ですから、花の写真はこれまで随分撮ってきました。一口に花と言ってもいろいろな美しさがありましてね、晴れた日の午後に日の光に照らされているのもいいし、また雨の降った日にしっとりと花弁を濡らしたのもいい」
美奈子は安西が何を言おうとしているのか、真意をはかりかねた。
「――奥さん、今の奥さんの“ここ”は花で喩えるなら晴天の日の花です。でも私は雨の日の花を見せてもらいたい」

「‥‥え?」
「ふふふ、今は花びらが乾いていて、少々うるおい不足ですかね。しかし、奥さんがその気にさえなれば、花弁がしっとりとうるおって、みずみずしくなるんじゃないですか。そういうところを見せてください」
「‥‥え‥‥ま、まさか‥‥」
美奈子は、安西が花に喩えて何を要求しているのか、うすうす勘付いてきた。
心臓の鼓動が速くなる。
「そのまさかですよ。奥さんが性的に高ぶれば、自然に“ここ”も濡れて、いっそう色づきも鮮やかになるはずだ。――奥さん、自慰をしてくれませんか」
「‥‥じ、じい?」
美奈子は初めて聞く単語に戸惑った。
「そう。自慰。“自ら慰める”と書きます。オナニーとかマスターベーションとも言いますがね」
美奈子の悲鳴が寝室に響き渡る。
「だ、駄目です!そんなの無理です!で、できません!そんなこと!」
「無理じゃありませんよ。奥さんだってしたことあるでしょう?新婚で旦那さんが海外へ単身赴任していたら、夜もさみしいでしょう。時々は自分で自分を慰めることもあるんじゃないですか」
「あ、ありません!そんなの!」
しかし言葉と裏腹に、美奈子の頬は急速に紅潮する。いけないことだと思いながらも、生理前の性欲が一番高ぶる時期に、誘惑に負けて股間に指が伸びたことが二、三度あったのだ。
安西はそんな美奈子の狼狽を見逃さなかった。
「ははは、やっぱり図星だったようですね。でも恥ずかしいことじゃありませんよ。誰だってすることですからね。――さあ、オナニーをして見せてください」
「い、いやです!絶対にいや!」
愛する夫の雄二にさえ決して見せることのできない秘められた淫靡な行為である。まして縁もゆかりもない、下卑た中年男の前で披露できるわけもなかった。
安西は大げさにため息をついた。
「そうか、できませんか。それじゃ仕方がない」
美奈子の表情が一瞬、明るくなる。ひょっとしたら諦めてくれたのかと思ったのだ。が、次の瞬間、悲鳴と共に、その表情を絶望が覆った。
「奥さんができないのなら、代わりに私がしてあげますよ。奥さんの大事なところが恥ずかしいおつゆで溢れるまで、舌で舐めてさしあげる」
安西はそう言うと、美奈子の太ももを押さえつけていた両腕にいっそうの力を込めた。美奈子は慌てて両足を閉じようとしたが、力ではまったく歯が立たない。
「だ、駄目よ!やめて!お願い、そんなのしないでェ!」
首を左右に激しく振りながら絶叫する美奈子を聞き流しながら、安西は数秒間、目の前に展開する股間の全貌を眺めた。
そして舌なめずりをすると、顔を美奈子の三角地帯に落とし込んでいった。