奪われる21
ゆうくん
2005年01月11日
3,831
安西は美奈子が安堵する暇を与えなかった。両肩をつかむとかすかに押す。
乳房から湧き上がる甘美な感覚と全身全霊で戦っていた美奈子は、虚をつかれ、たやすくバランスを崩し、後ろのセミダブルのベッドに尻餅をついてしまう。
「あっ」
シーツの冷たい感触がショーツ越しに感じられた。真夏のことなのでベッドの上には掛け布団がない。枕が一つと、夏用の薄い綿毛布が片隅に畳んで置いてあるだけだ。
「奥さん、そろそろ寝そべった写真を撮りますから横になってください」
そう言いながら、ベッドサイドから床に伸びた美奈子の両足を手に取り、グッと持ち上げる。足が上がったので、反対に上半身が後ろに倒れ、腰から後頭部までがシーツに密着する。安西は手にした両足をベッドの下端の方向目がけて投げ出す。美奈子はお尻を軸に、九十度回転させられ、気づいてみれば、一瞬のうちにベッドに仰向けで寝かせられていた。
「あっ!い、いや!」
美奈子が狼狽の声を上げる。この姿勢は本能的に恐怖を感じざるを得ない。
今にも男が襲いかかってくるような気がした。
が、とりあえずは杞憂だったようだ。安西は美奈子をベッドに横たえると、カメラを取りに背を向けた。美奈子から安堵の吐息が漏れる。
しかし、今の安西の行為は美奈子の胸の内に漠然とした不安をもたらした。
単なる中年男だと思っていたのに、今の動作の機敏さはただ者ではなかった。
――油断のならない男‥‥。
そうこうしているうちに、安西はカメラを手にしてベッドまで戻ってきた。
美奈子は撮影再開を予期して、仰向けに横たわったまま目を閉じ、カメラのフラッシュがたかれ、シャッターが切られるのを待った。
が、再び安西は意表をつく行動に出た。
カメラを傍らに置くと、年齢を感じさせない軽い身のこなしでベッドに上がってきた。ベッドが二人分の体重を受けて軋む。気配ではっとなった美奈子が目を開くと、もうすでに安西が自分のまっすぐ伸びた両足を跨ぐ形で膝立ちになっていた。こちらを見下ろしている。
その視線は美奈子の白いショーツに注がれていた。
美奈子の身体を戦慄が走った。安西の意図は明らかだった。
「さあ、奥さん、パンティを脱いでもらいますよ」
そう言葉を投げ下ろしつつ、早くも安西の両手が美奈子の腰の両側にそれぞれ伸びてきた。ショーツの上端のゴムの部分に指をかけ、ゆっくり引き下ろし始める。
「ああっ!ちょっと!や、やめてください!」
悲鳴が喉をついて出た。両手で懸命にショーツを押さえ、脱がされまいとする。さすがに最後の一枚を奪われるのは抵抗があった。
「奥さん、もともと裸になる約束だったでしょう。約束を破っては困りますよ」
「‥‥で、でも‥‥やっぱり‥‥いや」
「ここまできて、今更それは無しですよ。これまで奥さんは恥ずかしさに耐えてモデルになってくれたんでしょう?あと一枚脱ぐだけでいいんですよ。今やめたらこれまでの辛抱が水の泡になってしまいますがね」
「‥‥‥‥」
「それに――」
淫蕩な微笑が浮かぶ。
「私は奥さんの大事な部分をさっきじっくり見ているんですよ。ふふふ、今更隠したって無駄ってものです」
「ああ‥‥言わないでください」
美奈子は羞恥でがっくりと顔を横に伏せる。
「さ、奥さん、手をどけて。パンティを下ろしますから」
「‥‥う」
美奈子はためらいがちにショーツから手を離した。力を失った左右の腕が、身体の両脇に落ちる。
安西は満足げに口の端を持ち上げると、再びショーツのゴムに指の先を引っかけた。
「さ、パンティを脱がしますよ、奥さん」
安西の意地の悪い予告は、美奈子の心を恥辱で焼いた。ショーツのことを“パンティ”というのも中年男のいやらしさが滲み出て不快だった。
安西の指が引かれた。ショーツの前方が下がり、再び淡い楕円形の恥毛が姿を現し始める。と同時に、ぐっと尻が持ち上げられ、豊かなヒップからつるりと布地が剥かれる。再びベッドに落とされた美奈子は、シーツの冷ややかな肌触りをヒップにじかに感じた。
――ぬ、脱がされちゃう!
抵抗することが許されぬ美奈子は、ただ唇の端を噛んで耐えるのみだった。
股間を離れたショーツは、太もも、膝、脹ら脛、足首と捩れながら滑り降りていき、とうとう爪先から抜き取られた。
――‥‥ああ、とうとう‥‥はだかにされてしまった。‥‥恥ずかしい‥‥。
伏せた顔を真っ赤に染めながら美奈子は羞恥と屈辱に震える思いだった。
安西は逆に歓喜で身体が震える思いだった。とうとう美奈子を素っ裸に剥いてやったのだ。同時に手の内にある丸まったショーツに胸をときめかせた。美奈子が顔を背けているのをいいことに、捩れを直し、しげしげと見つめる。
クルリと裏返して、クロッチの部分――股間の亀裂が当たっていた二重底の部分を眺める。かすかに淡いレモン色の汚れが、縦に細長く付着している。ただし乾いているので、今の乳房への愛撫の結果溢れた愛液ではない。一日中穿いたショーツなので自然に付着した汚れなのだろう。
安西は己の愛撫で美奈子の股間が濡れなかったのが残念であった。が、気を取り直して眼下に横たわる白い裸身に視線を向ける。視線が両足の付け根に貼り付く。美奈子が両ももをピタリと閉ざしているので、股間の中心部は見えない。
――ふふふ、すぐに恥ずかしいおつゆでビショビショにしてやるからな。待ってろ。
安西は内心でそうつぶやくと、ショーツを傍らに置き、今度は美奈子の左手をとった。薬指のマリッジリングを外そうとする。
「な、なにをするんですか!」
「いや、指輪が気になって‥‥撮影の間、外してください。芸術写真に結婚指輪は無粋ですよ」
美奈子に抵抗する隙を与えず、リングを抜き取り、サイドテーブルの上に置いた。
美奈子は急に不安になる。マリッジリングは夫の雄二の象徴でもあったのだ。
それが身体から奪われたことで、雄二との心のつながりが断ち切られたような気がした。反射的にテーブルの上の雄二の写真に目を向ける。小さな額縁に入れられた写真は、しかし、別の方向を向いていて、雄二の笑顔を見ることはできなかった。
美奈子は文字通り一糸まとわぬ全裸にされ、急に襲ってきた孤独感に不安の色を濃くしながら、ベッドに横たわっていた。
乳房から湧き上がる甘美な感覚と全身全霊で戦っていた美奈子は、虚をつかれ、たやすくバランスを崩し、後ろのセミダブルのベッドに尻餅をついてしまう。
「あっ」
シーツの冷たい感触がショーツ越しに感じられた。真夏のことなのでベッドの上には掛け布団がない。枕が一つと、夏用の薄い綿毛布が片隅に畳んで置いてあるだけだ。
「奥さん、そろそろ寝そべった写真を撮りますから横になってください」
そう言いながら、ベッドサイドから床に伸びた美奈子の両足を手に取り、グッと持ち上げる。足が上がったので、反対に上半身が後ろに倒れ、腰から後頭部までがシーツに密着する。安西は手にした両足をベッドの下端の方向目がけて投げ出す。美奈子はお尻を軸に、九十度回転させられ、気づいてみれば、一瞬のうちにベッドに仰向けで寝かせられていた。
「あっ!い、いや!」
美奈子が狼狽の声を上げる。この姿勢は本能的に恐怖を感じざるを得ない。
今にも男が襲いかかってくるような気がした。
が、とりあえずは杞憂だったようだ。安西は美奈子をベッドに横たえると、カメラを取りに背を向けた。美奈子から安堵の吐息が漏れる。
しかし、今の安西の行為は美奈子の胸の内に漠然とした不安をもたらした。
単なる中年男だと思っていたのに、今の動作の機敏さはただ者ではなかった。
――油断のならない男‥‥。
そうこうしているうちに、安西はカメラを手にしてベッドまで戻ってきた。
美奈子は撮影再開を予期して、仰向けに横たわったまま目を閉じ、カメラのフラッシュがたかれ、シャッターが切られるのを待った。
が、再び安西は意表をつく行動に出た。
カメラを傍らに置くと、年齢を感じさせない軽い身のこなしでベッドに上がってきた。ベッドが二人分の体重を受けて軋む。気配ではっとなった美奈子が目を開くと、もうすでに安西が自分のまっすぐ伸びた両足を跨ぐ形で膝立ちになっていた。こちらを見下ろしている。
その視線は美奈子の白いショーツに注がれていた。
美奈子の身体を戦慄が走った。安西の意図は明らかだった。
「さあ、奥さん、パンティを脱いでもらいますよ」
そう言葉を投げ下ろしつつ、早くも安西の両手が美奈子の腰の両側にそれぞれ伸びてきた。ショーツの上端のゴムの部分に指をかけ、ゆっくり引き下ろし始める。
「ああっ!ちょっと!や、やめてください!」
悲鳴が喉をついて出た。両手で懸命にショーツを押さえ、脱がされまいとする。さすがに最後の一枚を奪われるのは抵抗があった。
「奥さん、もともと裸になる約束だったでしょう。約束を破っては困りますよ」
「‥‥で、でも‥‥やっぱり‥‥いや」
「ここまできて、今更それは無しですよ。これまで奥さんは恥ずかしさに耐えてモデルになってくれたんでしょう?あと一枚脱ぐだけでいいんですよ。今やめたらこれまでの辛抱が水の泡になってしまいますがね」
「‥‥‥‥」
「それに――」
淫蕩な微笑が浮かぶ。
「私は奥さんの大事な部分をさっきじっくり見ているんですよ。ふふふ、今更隠したって無駄ってものです」
「ああ‥‥言わないでください」
美奈子は羞恥でがっくりと顔を横に伏せる。
「さ、奥さん、手をどけて。パンティを下ろしますから」
「‥‥う」
美奈子はためらいがちにショーツから手を離した。力を失った左右の腕が、身体の両脇に落ちる。
安西は満足げに口の端を持ち上げると、再びショーツのゴムに指の先を引っかけた。
「さ、パンティを脱がしますよ、奥さん」
安西の意地の悪い予告は、美奈子の心を恥辱で焼いた。ショーツのことを“パンティ”というのも中年男のいやらしさが滲み出て不快だった。
安西の指が引かれた。ショーツの前方が下がり、再び淡い楕円形の恥毛が姿を現し始める。と同時に、ぐっと尻が持ち上げられ、豊かなヒップからつるりと布地が剥かれる。再びベッドに落とされた美奈子は、シーツの冷ややかな肌触りをヒップにじかに感じた。
――ぬ、脱がされちゃう!
抵抗することが許されぬ美奈子は、ただ唇の端を噛んで耐えるのみだった。
股間を離れたショーツは、太もも、膝、脹ら脛、足首と捩れながら滑り降りていき、とうとう爪先から抜き取られた。
――‥‥ああ、とうとう‥‥はだかにされてしまった。‥‥恥ずかしい‥‥。
伏せた顔を真っ赤に染めながら美奈子は羞恥と屈辱に震える思いだった。
安西は逆に歓喜で身体が震える思いだった。とうとう美奈子を素っ裸に剥いてやったのだ。同時に手の内にある丸まったショーツに胸をときめかせた。美奈子が顔を背けているのをいいことに、捩れを直し、しげしげと見つめる。
クルリと裏返して、クロッチの部分――股間の亀裂が当たっていた二重底の部分を眺める。かすかに淡いレモン色の汚れが、縦に細長く付着している。ただし乾いているので、今の乳房への愛撫の結果溢れた愛液ではない。一日中穿いたショーツなので自然に付着した汚れなのだろう。
安西は己の愛撫で美奈子の股間が濡れなかったのが残念であった。が、気を取り直して眼下に横たわる白い裸身に視線を向ける。視線が両足の付け根に貼り付く。美奈子が両ももをピタリと閉ざしているので、股間の中心部は見えない。
――ふふふ、すぐに恥ずかしいおつゆでビショビショにしてやるからな。待ってろ。
安西は内心でそうつぶやくと、ショーツを傍らに置き、今度は美奈子の左手をとった。薬指のマリッジリングを外そうとする。
「な、なにをするんですか!」
「いや、指輪が気になって‥‥撮影の間、外してください。芸術写真に結婚指輪は無粋ですよ」
美奈子に抵抗する隙を与えず、リングを抜き取り、サイドテーブルの上に置いた。
美奈子は急に不安になる。マリッジリングは夫の雄二の象徴でもあったのだ。
それが身体から奪われたことで、雄二との心のつながりが断ち切られたような気がした。反射的にテーブルの上の雄二の写真に目を向ける。小さな額縁に入れられた写真は、しかし、別の方向を向いていて、雄二の笑顔を見ることはできなかった。
美奈子は文字通り一糸まとわぬ全裸にされ、急に襲ってきた孤独感に不安の色を濃くしながら、ベッドに横たわっていた。