奪われる17

ゆうくん
2005年01月10日
3,275
――あ、あたし‥‥見られてる?ア、アソコを‥‥?
「‥‥ああ‥‥あ‥ああ‥‥」
強すぎる衝撃が美奈子を襲った。巻き起こる恐慌が思考力を奪う。金縛りにあったように、全身が硬直してとっさには動かない。股間を手で隠すことさえできなかった。焦点を失った瞳がうつろに動き、口からは怯懦に満ちたうめきが漏れるばかりである。
美奈子は、安西との交通事故の際の様子でもわかるように、強い精神的なショックを受けると、身体が硬直して動かなくなってしまう性質(たち)らしい。
そもそも人間はあまりに大きな衝撃に見舞われると、即座には身体が反応せず棒立ちになってしまうそうだが、美奈子は人よりも若干そういう面が強いのかもしれない。
美奈子は一時的にショック症状に見舞われてしまった。茫然自失の有様だった。
無理もない。夫の雄二との夫婦生活でも、部屋を暗くしなければ許さないほど羞恥心の強い美奈子である。夫にさえ明るい場所では見せたことのない羞恥の源泉を、赤の他人の中年男に丸ごと覗き込まれているのだ。しかも明るい照明のもと、数十センチの至近距離から。
その激烈な羞恥は、美奈子の精神力の限界を超えていた。美奈子は今にも泣き出しそうな表情で立ちつくす。まるでべそをかいた子どものようである。
安西はそんな美奈子の様子を見上げる。そのうつろな瞳を一瞥すると、興奮で乾いた唇を舌でひと舐めし、今がチャンスとばかりにカメラを構えた。レンズの焦点距離ぎりぎりまで股間に接近し、シャッターを切った。
パッ!
フラッシュの強烈な光線が、美奈子の秘密の部分から影を奪う。
美奈子はその瞬間、股間にストロボの熱を感じた。瞬間的に目を閉じたが、フラッシュの強烈な白い光線が網膜を焼いた。
それが刺激となって、美奈子は一時的なショック症状から脱却した。身体の運動機能も速やかに回復する。
「い、いやあーーーーーっ!!」
絶叫がほとばしり出た。同時に両手で股間を覆い、身体を丸めてしゃがみ込む。
「み、見ないでーーーっ!!見ないでーーーっ!!」
半べそをかきながら慌ててショーツを引き上げる。が、ショーツは太ももの付け根まで到達しても、捩れて丸まっているので、なかなか美奈子の秘毛の部分もヒップも隠すことはできなかった。
「ふふふ、奥さん、申し訳ない。これは事故ですよ。ズボンだけ下ろすつもりだったんですがね。なにぶん、このズボンがピッタリ過ぎるんで。ズボンを引っ張ったらパンティまで一緒に脱げちゃったんです。これはワザとじゃないから、許してくださいよ」
安西はヘラヘラ笑いながら、小刻みに震える美奈子の背中に声をかける。
「いや、それにしてもいいものを見せてもらいましたよ。奥さんのそこは実に綺麗だ。まさに芸術というのにふさわしい。カメラにフィルムが入っていないのが実に残念ですよ。素晴らしい芸術写真になったに違いないんですがね!」
本当はしっかり写真を撮影しておきながら、いけしゃあしゃあと言ってのける。
「ふふふ、でも写真はなくても私の網膜にはしっかり焼き付きましたがね」
「‥‥ううう‥‥」
美奈子は恥辱と屈辱とで固く閉じた両目から涙が滲み出てきた。
「しかし――私はなんだか奥さんが他人のような気がしなくなってきましたよ。だって奥さんの秘密の部分をこんなにはっきり拝むことができたんですもんね。私は奥さんがアソコを見せた何人目の男ですかね?そう何人もいないんでしょう?ひょっとしたら旦那さんの次くらいですかね?それだったらこの上もない光栄ですがね、はっはっはっは!」
さすがに安西も興奮しているのだろう、いつになく饒舌になっていた。その上、女なら誰でも隠しておきたいであろう最大の秘密を、完全に白日の下に暴いたことで、美奈子を我がものとする自信がついたのか、発言そのものも大胆になってきている。
美奈子はそんな安西の哄笑を背中に浴びながら、自分が次第にのっぴきならない立場に追い込まれつつあるのを、じわじわと感じていた。
しかし美奈子にとって悪夢の一夜はまだまだこれからなのだった。