奪われる16

ゆうくん
2005年01月10日
3,585
美奈子は自分の下腹部が露出したことに気づいていない。
これがスカートだったり、あるいは同じパンツでももっとゆったりしたデザインのものだったら、間違いなく瞬時に勘付いていただろう。柔らかいショーツが肌を滑り降りるときは独特の感触がある。本人に気づかれることなくそれを脱がすのは極めて難しい。
が、ストレッチパンツは、腰の周辺から膝の辺りまで、ぴったり肌に貼り付き、隙間というものが全くない。安西が力を込めて引きずり下ろした際、パンツの粗い布地が肌を強く擦り、それがショーツの柔らかく滑る感触を打ち消してしまったのだ。
さらに羞恥のあまり強く両目を閉じていたことも、状況把握を大幅に遅らせる原因にもなった。
美奈子はたっぷり数十秒にわたり、明るい照明の元で、至近距離から、女の最大の秘密を男の視線の前に曝すことになってしまった。
――こ、これが美奈子の‥‥かあ。
これまでのニヤニヤ笑いが消え、むしろ真剣そのものの表情が、安西のキツネ面に浮かんでいる。先日の盗撮写真では股間の切れ目の上端しか見えなかった。が、今は安西の望むもの全てが、手を伸ばせば容易に触れる距離にあるのだ。
レーザー光線のように鋭利な視線が、美奈子の股間を這い回った。
事前に足を少し開かされているので、先ほどまで密着していた内ももが離れ、股間の全貌が露わになっている。
ストレッチパンツを力任せに引きずり下ろされた瞬間、美奈子はバランスが崩れるのを防ぐため、やや腰を引きヒップを後ろに突き出す体勢になったのだが、しゃがみ込んで両ももの辺りから見上げる安西の視線を妨げることはできなかった。
美奈子のそこは初々しかった。小判形の茂みは淡く、股間の中心に息づく秘めやかな亀裂の半ばまでしか生えていない。羞恥の源泉を覆い隠すという意味では、全く機能していなかった。
足を開いているので、外側のぽってりした土手が左右に開き、その内側の二枚の花弁が慎ましくたたずんでいるのが見えた。二枚の花びらはぴたりと門戸を閉ざしている。内部の粘膜の部分までは窺うことができない。
花びらは淡い紅色で、色素の沈着もなく、形の偏りも崩れもない。口を閉じた二枚貝のような合わせ目が直線的に伸びている。
人妻というよりは初心な娘のような秘部であった。おそらく、それは美奈子の性体験の少なさに由来しているのだろう。いまだに発展途上なのだ。今後、人妻として性体験を重ねていけば、このたたずまいも変わっていくに違いない。
安西は美奈子の股間にむしゃぶりつきたい衝動を抑えるのに懸命だった。手を差し伸べて閉じた花弁を開き、内側の粘膜の部分を晒したい。襞をかき分け、女の最奥への入り口の部分を凝視したい。襞肉の感触と体液の味を己の舌でたっぷり味わいたい。そして――下半身の器官で思う存分美奈子の肉体をむさぼるのだ。‥‥だが、今はまだその段階ではない。
――まだ我慢だ。犯すのはもっと味を醸し出してからだ。
安西は身体の内部から突き上げてくる衝動を抑え、美奈子の女の部分を脳裏に焼き付ける作業にいそしんだ。

美奈子がようやくその双眸を開いたのは、下半身が露出してから一分近く経過してからだった。ストレッチパンツが膝まで下ろされてから、安西に新たな動きがないことに不審を覚えたのだった。パンツを足から抜き取ろうともしないし、カメラのシャッターを切る気配もない。
――どうしたのかしら。
美奈子はうつむいたまま、おそるおそる瞼を上げた。が、若干腰が後ろに引けている体勢の上に、高く張り出した双乳と、やや裾広がりのデザインになったキャミソールの下端が、視線を中途で遮ってしまい、剥き出しの股間になおも気づかぬままであった。
まず美奈子の視界に飛び込んできたのは、自分の両膝の辺りにからまるストレッチパンツだった。上から見下ろすと、まるで朝顔の花のように噴水型に広がって、膝の周囲に輪を形成している。
ふと美奈子は、そこに不審なものがあるのに気づいた。ストレッチパンツのつくる輪のずっと内側、朝顔の花弁の底の辺りに、もう一つ、ごく小さな輪が足にからまっているのだ。それは捩れた白い布地のようだった。一瞬、ストレッチパンツの裏地かとも思ったが、このパンツには裏地などついていないはずだ。
――‥‥?なに、これ?
その正体に気づく前に、新たな事実が美奈子の注意を奪う。
安西がしゃがみ込んで、自分の下半身の一点を凝視しているのに気づいたのである。先ほどまでの品のない笑顔が消えて、切れ長のキツネ目がいっそう細くなり、やけに濁った目つきで、一心不乱に見つめている。おそらくさっきからずっとこうしていたのだろう。
どこを眺めているのか、視線をたどるまでもなく、美奈子には判っていた。
ショーツ一枚になったデルタの部分に違いない。恥辱で身体が熱くなる。
しかし、それと同時に美奈子は奇異の念に打たれた。安西の様子は奇妙だ。
いい年をした中年男が、女のショーツ姿くらいで、こんなに真剣な目つきになるだろうか。またいつまでもいつまでも見飽きないものだろうか。
次の瞬間、正体不明の戦慄が美奈子の胸を貫いた。“嫌な予感”と言えばわかるだろうか。
――ま、まさか‥‥。
おそるおそるうつむいて、膝に咲いた朝顔を見下ろし、内側の白い輪に目を凝らす。
それは正確には輪形ではなかった。数字の8の字を横向きにした形で、両足にまとわりついているのである。
「‥‥あっ‥‥」
小さな驚きの声が上がった。捩れた白い生地の中に縫い目が見えたのだ。それは明らかにクロッチの縫い目だった。
――こ、これって‥‥ま、まさか‥‥あたしの‥‥ショーツ?
美奈子の心臓が早鐘のように鳴り出した。不安のあまり、いささか呼吸が早くなったようだ。顔をゆっくり上げる。前方の姿見の中に映った自分の姿を目が捉えた。
「‥‥ああっ!」
驚きというよりは悲鳴に、悲鳴というよりは怯えに近い声が口をついて出た。
鏡の中に立ちつくす美奈子の下半身に、ショーツの姿はなかった。両足の付け根の三角地帯には、楕円形の恥毛が煙っている。
しかも両足をやや開いているので、淡い恥毛を透かして女の切れ目までが認められるのだ。
ようやく美奈子は己の股間が丸出しになっていること、そしてその部分が先ほどからずっと安西の執拗な凝視に曝されていることを理解した。