奪われる15

ゆうくん
2005年01月06日
4,825
同じ裸になるなら自分で脱いだ方がどれほどマシか。中年男の手で服を一枚一枚剥ぎ取られるなど考えただけで虫酸が走る。
「だ、駄目です!わ、わたし、自分で脱ぎます!」
安西は困ったように苦笑を浮かべた。
「奥さん、私は何もいやらしい目的で脱がそうってわけじゃない。シャッターチャンスを逃さないためですよ。服をさっさと脱いでしまうより脱いでいる過程に美があるかもしれない。それを逃さないためにも、私自身にやらせてもらいたいんです」
「で、でもいやなんです‥‥お願い‥‥」
「奥さんは先ほどの念書をお忘れかな?」
「ね、念書?」
「そう。あの念書に“印東氏の指示に従う”という文面がありましたよ。だから奥さんは私の指示に従う義務がある」
「‥‥‥‥」
美奈子は悔しそうに眉間に皺を寄せた。が、あきらめたようにうなだれた。
ひょっとして自分はとんでもない念書を書いてしまったのではないだろうか?
そんな後悔の念が脳裏をよぎる。
「ふふふ、わかってもらえたようですね。では奥さん、失礼しますよ」
美奈子に近づくと、安西はブラウスのボタンを指で摘む。ピクッと美奈子の身体がおびえたように反応する。
安西の指が一つめのボタンを開放した瞬間、耐えきれずに美奈子は目をつむった。
安西は一つ、また一つとボタンを外してゆく。次第にブラウスの前が左右に開き、その下の、光沢のある白いキャミソールが安西の目を捉える。その下のブラジャーが透けて見えた。美奈子に聞こえないように小さく生唾を飲む。
ストレッチパンツの上端辺りまでボタンを外し終えると、ブラウスの合わせ目を左右に引っ張った。逆三角形に前が開く。ブラジャーに覆われ、キャミソールを内側から押し上げている豊かな双乳がブラウスの下から転がり出た。
「‥‥ああ‥‥」
絶望したように美奈子が天井を見上げる。
ブラウスの前を開いた状態で安西はまた何回かシャッターを切った。しかも今回も美奈子に笑顔を強制した。美奈子は引きつったような笑みを浮かべ、フラッシュの強烈な光に晒された。
「いいですよ。美しいですよ、奥さん」
安西は自分の計略がうまくいったことに笑いが止まらない。
実は――カメラにはフィルムが入っていたのである。撮影の真似事ではなく、実際に写真を撮影していたのだ。
簡単なトリックだった。安西は同型の小型カメラを全部で三台用意し、ハードケースの中に忍ばせてきた。うち一台は空、二台は三十六枚撮りのフィルムが装填してある。まず空のカメラを美奈子に見せ、安心させた後、ハードケースからレンズ拭きの布を取り出す振りをして、フィルム入りのものとすり替えたのだ。
今後美奈子は最大で七十二枚、安西の手で写真を撮影されることになる。しかもそのうちの多くはヌード写真になるはずだ。
なぜこんな手の込んだことをするのかと言えば、一種の保険であった。笑顔で服を脱ぎ裸になる美奈子の写真があれば、万一警察沙汰や裁判沙汰になったときに、和姦の主張ができるからである。デジカメを使わず、わざわざフィルムで撮るのも、裁判所が証拠として認定するからだ。
美奈子はいつの間にか、安西の罠に搦めとられてるのだが、むろん当人はその事実を知るよしもない。
「さ、ブラウスはもう要りませんからね」
「‥‥‥‥」
安西は美奈子のブラウスの裾をストレッチパンツの中から引っ張り出し、両腕から引き抜いた。美奈子の身体からブラウスが離れ、上半身はキャミソール姿になった。ムッと盛り上がった乳房が悩ましい。華奢な肩と鎖骨の窪みも男の淫らな感情をくすぐるものだった。
そんな美奈子の姿は、前方の姿見に映し出され、本人にも見ることができた。
鏡に映った自分の姿に、美奈子は改めて強い羞恥を感じるのだった。そもそも姿見は光量を補うために置かれたものではない。一枚一枚と衣服を奪われ、裸体に近づいていく有様を美奈子に見せつけ、恥辱を与える目的で置かれたのだ。
キャミソール姿を更に二、三枚撮影した安西は再びカメラを下ろす。
次に目が向かったのは、下半身にぴったりと貼り付いたストレッチパンツだった。ことに二本の太ももの付け根と下腹部のつくるトライアングルを睨め回す。
安西の視線が己のパンツに集中していることに気づいた美奈子は慄然とした。
パンストを穿いていないので、この下にはショーツしかつけていない。パンツを奪われたら、下半身はショーツ一枚になってしまう。しかも上半身がスリップならショーツを隠すこともできるが、キャミソールではそれもできない。
安西が近づいてストレッチパンツのボタンに手を伸ばしたとき、美奈子は緊張のあまり身体が硬直してしまう。
そんな美奈子の様子をむしろ楽しみつつ、安西はパンツの合わせ目――ボタンとファスナーの部分――の両側をそれぞれの手でつかむ。力を込め、ぐっと左右から真ん中に布を寄せ、ボタンの周辺部を浮かせ加減にしつつ、緩くなった合わせ目からボタンを抜いてしまう。
安西は唇の端を淫蕩に曲げると、ファスナーの金具を摘んだ。ゆっくり下方へ引き下げ始める。
ジジジジジ‥‥。金具の動きにつれてファスナーがV字型に開いてゆく。その隙間の下に白いショーツが覗けた。
「‥‥うう‥‥」
羞恥のあまり、美奈子がかすかにうめく。
安西はファスナーを下端まで押し下げた。レースの飾りの付いたショーツのフロント部が露わになっている。
「さあ、こんどはこのズボンを脱ぎましょうか」
直立不動で立ちつくす美奈子の前で安西がしゃがみ込んだ。ストレッチパンツの上端に近い両サイドに手を回し、布をつかむ。後は下に引っ張れば、パンツは美奈子の下腹部を離れるはずだ。
「奥さん、少し足を開いてくれませんか」
「えっ?」
「このズボンはぴったりすぎてちょっと強めに引かないと脱げないでしょう。
少し足を開いていないとバランスを崩して転んじゃいますよ」
「‥‥わかりました」
確かにストレッチパンツはぴったり密着しているだけに脱ぐのにはやっかいだ。美奈子は渋々足を左右に移動させる。といってもせいぜい膝の辺りでコブシ三つ分の隙間ができたに過ぎない。
「ご協力感謝です。――では」
いよいよ、という気配に、美奈子は思わず目を固く閉じた。裸になるわけではないが、やはりショーツ一枚の姿は極度に羞恥心を刺激する。
安西はそんな美奈子の表情を眺めているうちに、ふと悪戯心が芽生えた。
ニタリと品なく笑うと、一度両手を緩め、パンツをつかみ直す。その際、こっそりパンツ越しにその下のショーツの布まで摘んでしまう。美奈子が気づいた気配はなかった。
――ククク、美奈子さんよ。あんたの秘密の部分をこれから拝ませてもらうからな。楽しみだぜ。
安西は息を軽く吸い込むと、両腕の筋肉をググッと緊張させ、力任せに引っ張った。
ズルズルズルズルッ!
下半身にピタリと吸い付くように密着したストレッチパンツも、力尽くで引っ張られてはたまらない。一気に膝の辺りまで引き下ろされた。
むろん、美奈子の下半身を離れたのはパンツだけではなかった。女の部分を守る最後の砦――ショーツも同じ運命をたどった。
美奈子の股間は一瞬のうちにその全貌を安西の前に明らかにした。
安西の淫靡な視線がそこに突き刺さる。
両目を固く閉じた美奈子は――まだ気づいていない。